八十一 大人たち (レイナ)
自分が誰かを殺したのかもしれない。
レイナには予感があった。
そういう場面に自分がいる想像を繰り返しながら、現実とが混乱して、自分がわからなくなる。
施設の大人がダメだよって言う場所の先に暗い影があって、そこに何故か人を殺すという言葉がある。その言葉と自分の過去が連結してる。施設の大人の言葉や表情に、幾度も感じてきた闇の部分。大人たちの行動や履歴を集めるとその暗闇の声が聞こえてくるのだ。
(この娘は人を殺すかもしれないから気をつけろーー。)
人を殺した、その罪でこの施設にいるのかもしれない、と思うとき、レイナの心は乱れた。呼吸がおかしかったり、汗がすごく出たりする。そんな筈はないし、そもそも記憶にもないと思いながら、でも、実際に自分には質問して過去を問いただす相手さえいない。いたとしても、怖くてそんなことはできない。
だからパソコンだったのかも知れない。
きっとどこかでパソコンで調べることが、レイナには家族の会話の替わりだったのかもしれない。パソコンを開いて画面を見てキーボードを叩いている時間だけは面倒な大人たちがいない場所だったからーー。