七十七 業務転換 (赤髪女)
「毎日夕方に、ですか。この場所に?」
「……。」
「埋立地ですかね、新木場。駅からは遠い。」
「質問と感想はいらない。」
「…はい。」
「毎日、三万円を、封筒に入れればいい?」
「うむ。」
「お金は?」
「報酬とは別に追加して用意してある。ポストを見ておけ。」
「了解しました。」
「例の綾瀬の人物に電話をすればいいのですか?」
「そうだ。」
「とくに名乗らなくてもいい。名前は尾嵜だ。尾嵜か?とだけ確認すればいい。金を毎日渡すと言えばいい。」
「この人物はいったい。」
「質問はいらない。」
「失礼しました。それと、猫の死体の方、は?」
「猫?」
「風間のほうです。」
「そちらは、なしでいい。」
「ほんとうですか」
「嘘をつく理由はない。」
「探偵の方は。」
「継続だ。基本はそちらを尾行しておけ。情報を拾い続けろ。」
「はい。」
「その合間に、この作業をすればいい。金を届けるだけだからな。簡単なことだろう。」
ヘリウム声の指示者が幾つかの作業の方針を変えたらしい。探偵の情報収集は継続のようだが、新しくまた別の作業を追加するという。赤髪女には内容はどうでもよかった。作業が増えたということは増額した報酬が続くということである。
追加の内容は、指示者のいう妙な場所に金を届けるというものだった。
それほど複雑で難しい印象はない。綾瀬のもう一人の人間にGPSを取り付けるという作業に比べれば、よほど楽だ。金を届ける、というのは単純でいい。
自分がやりやすい単純な仕事がいいのだ。もともと、社長さんの仕事をしてきた八年間は単純だったのだ。届け物が多かった。もしくは何かをゴミ箱に捨てるとか。とにかく誰とも会話せずに成り立っていた。