六十九 スクリプト(レイナ)
レイナは画面を見ながら首を捻った。
風間と守谷に関する、令和三年から元年までの三年分のSNSや記事の収集は完了した。さらに平成の時代にも直近から遡り1000日ほど検索・収集をした。平成三十年、二十九年、二十八年の三年間である。しかし結果は、思うように進まない。問題の風間と守谷の二人は少なくともこの六年間のネット情報では犯罪者という可能性は限りなくゼロに近い。ネットの結論は明確だった。
あくまで三年分を遡っただけの現状のデータとはいえ、風間と守谷には全く事件・犯罪性がない、というのはレイナの中では想定外だった。この点は軽井澤さんや御園生君とも同意見で、あの葉書には強く復讐の印象があるし、過去への強い怨念が顕在する。殺人や強姦の犯罪歴を、レイナは想像していた。しかし直近六年ほどのネット記事の収集では、それらは結果は出てこない。
普通犯罪者は何かの書き込みを受けるものである。多くの受刑者は刑務所を出た後も掲示板を賑わす。インターネットは罪のあり方を変えた。犯罪者の掲示板はネットのコンテンツの一角を担っている。残忍な犯罪の手口や状況の再現、それを許さぬ小市民のコメント、が応酬するだけで十分に人が閲覧するコンテンツなのである。
レイナのMacBookは最大速度で計算を続けている。少なくともあと1日もすれば平成の残りの時代まで、ほぼ読み込めるはずだ。現時点では、まずは計算を待って、それから考えを整理し直すしかない。
だが、一点だけ、気になることがあった。
機械学習がある全く別の事件について提示をしているのである。その事件の犯罪者が風間や守谷だ、という風にではない。関連性、という部分だけでとある事件をMacBookは提示している。何の材料がその古い事件を呼んでいるのかは不明である。計算の根拠も、アルゴリズムもわからない。
レイナは首を傾げるしかなかった。
というのも、その事件は既に犯罪者は確定していて、その受刑者たちと、風間も守谷には関連が一才ないのである。