五十一 祖師ヶ谷 (赤髪女)
赤髪女は祖師谷大蔵の自宅に帰ると、郵便箱を見た。薄茶色い封筒が、無造作においてある。現金が入ってるとわかる厚みがある。
金が届くとほっとする。
と同時に、やはり少し怖いと思う。
こう言うふうに、郵便受けに封筒が入るようになったのは今回が初めてなのだ。
これまでは違った。
振り込みでも郵送でもなかった。
例えば買物をして帰ってくるといつの間にか鞄の中に入っていたりする。路を歩いているとアスファルトの真ん中に茶色い紙袋が落ちている。目立つように。駅の文庫本のコーナーに、紙袋で置いてあることもある。それが何故か、自分の目に止まる。すべて、必要なときに絶妙のタイミングで赤髪女に渡された。
しかし、今回は違う。
こうやって郵便ポストに堂々と届く。
違和感がある。封筒を取り出して中身を確かめながら、もし隠しカメラでもつけたら届けた人間の顔を知ることが出来るのだろうかと思った。すくなくともこの八年間のやり方では、そういう可能性さえ想像したことがない。
仕事の信用が上がって、届ける手順が簡易化したのだろうか。社長さんの言う通りにもう八年もしてきた。社長さんはいつも言っていた。一生懸命にずっとやり続けるといつか何かが良いことが訪れるよ、と。
今回のこのやり方になって、お金が増えたのは確かだ。サラリーマンみたいに昇格して給与が増えたという事なのだろうか。
赤髪女は、万札を掴んで自分の財布に入れ直した。