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星空出版 HOSHIZORA PRESS

ミステリー・連載

パラダイム

下代沢侯二
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第 44 章 四十一 水道橋界隈(太刀川龍一)

四十一 水道橋界隈(太刀川龍一)

 東京ドームは本郷三丁目から坂をひとつ降りた目の前にある。
 ドームの横を南北に走るのが白山通りで、南は水道橋神保町の書店街を抜けて皇居に向かう。ドームから東へ坂上がれば東大のある本郷台を抜け、上野の不忍池や湯島へと続く。上野の広小路を右折すると秋葉原の電気街が始まっていく。そこからは平べったい江戸以来の目抜き通りで、神田、大手町、日本橋を超え銀座へと続く。
 どの街に降りても東西南北を把握する習癖が太刀川にはあった。
 一度地図を見て仕舞えば頭から離れないけれども、そもそもどこの街にいても理科系の脳には不思議な病があって、どちらが北かを直感してしまうのだ。そうやって街歩きばかりしているせいで、太刀川には東京のあらゆる地理と、道と、企業の建物が頭に入ってしまっている。記憶したというのではなく、塗り絵のように自分の歩いた道が色づいてしまうからである。
 昼過ぎに秋葉原を通り、午後には、大手町に入り三時前に日本橋を通り過ぎる見込みだ。多くの人は地下鉄だ、タクシーだと乗り換えるが、実際に歩いてみてもそれほど時間はかからない。夜の銀座での経団連重鎮との会食に、合わせて二時間ほどの時間が余っている。少し、本でも読もうと、太刀川は思った。

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