実験番号 BSC1 454
毎朝、彼女が僕におはようと言う。
春には桜を見に行く。夏には花火だ。浴衣を着た彼女と祭りの縁日を歩く。秋は一緒に本を読む。喫茶店と河川敷の間を散歩する。なぜか冬は訪れない。
夏祭りの記憶は永遠の映画のように、くるくると回り続けてくれる。しかも、そのどれもが新しい朝の空気を吸い込みまた違う彼女を僕に見せてくれる。一度たりとも同じ映画はない。本当の名作はいつ何度見ても全く違う感動を与えると本を読んだ事がある。僕はそういうふうにいつも思っている。
今日も花火がある。
僕らはほかに誰もいない、二人きりだ。
花火は美しく空を輝かせ、しかし僕には、輝く花火の火を受けて、色彩を幾重にも変える彼女の横顔を、見任せにする。
「綺麗だね」
僕は毎日そうやって彼女との時間を過ごしながら生きていく。