実験番号 HSC88008
十一月になった。
僕はとうとう、大胆に告白した。
いつまでも何も自分の態度を明らかにせずにいることが耐えられなくなっていったのだ。
その告白は、理由として、自分を自分で追い込んだものだった。
告白する勇気もないのは自分でも嫌だと思った。関係を曖昧にして、責任もなく存在することが嫌だと思ったのだ。それは唐突だった。いや唐突だったが故に実現されたのだと思う。
この時のことを、僕は、自分の行ってきた行動の中で、もっとも美しく誇らしいものとして記憶している。
「付き合ってください。」
「……。」
「ずっとそう思っていえなかった。」
言葉は唐突だった。前の会話を用意してとか、場所を考えてとかするのをしなかった。僕は素直に、いきている喜びを語るように言葉を、目の前に置いた。
「ごめん。勝手なことを言って。大学を受かったらでいい。ぼくと付き合ってください」
僕はそう言ったのだ。
僕はこの言葉を大切に過去の光景の中の映画の一つのように愛している。真っ直ぐにそう言った自分を誇りに思ってもいる。
「ありがとう。」
「……。」
「うん。ぜひ春になったらどこかに連れて行ってね。」
「ほんとうに?」
「うん」
「ありがとう」
「うん」
「かならず、頑張るよ」
相手の気持ちを確認した興奮と恥じらいとで、僕は手持ち無沙汰になった。先日のように手を繋ぐこともできず「ありがとう」に似ている意味の言葉を探して声にするので精一杯だった。幸せだった。また明日も会おうと言った。バイトが毎日なければいいのにと話した記憶もある。
そしてそれが僕の見た彼女の最後になった。