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星空出版 HOSHIZORA PRESS

ミステリー・連載

パラダイム

下代沢侯二
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第 192 章 実験番号#2329

実験番号#2329

 僕の大学の受験は面白かった。僕が母と家族を喜ばせることができたのはそれだった。
 勉強は最初は、負けん気ではじめたものだけど、途中から面白さに変わっていく。物理と化学の論述問題は、僕が受験した東大の理科一類には必須で、ごまかしは聞かない。ひとつの方程式が私の中で物理と数学という一見別の論理を重ねたのだ。ひとつはEアインシュタイン博士の開発した相対性理論。これにはさまざまな革命があるけども、ぼくは、原子爆弾という方向に向かったことは忘れてはならないと思っている。E=Mccという方程式が、こんな短い方程式が、原子力爆弾の設計の基礎なのですから。つまり重さを、エネルギーに変えられるなら「光の速さを二回も掛け合わせた」数のレベルで、エネルギーになる。つまり、爆発が起こるということです。実際に原子爆弾の材料は、普通の火薬とは全く違う量なのですから。
 これが物理の教科書を読み進んでいくと、どんどん教えられていく事実なのです。宇宙のコペルニクス展開、パラダイムシフトを初めて、ニュートの万有引力と、マクスウェルの方程式からアインシュタインの相対性理論までは、僕にはまるで探偵小説のような、仕掛けにも見えました。僕には世の中は長い探偵小説に見える。科学の中にも人間のプロットがたくさんあって、それを辿ることで今に向かっていく。核戦争にむかっていく。
 そうして、このことを知ると同時に、物理だけではなく、化学というのも同じように面白くなる。こっちもこっちで探偵小説なんだ。一番のミステリーは、すいへいりーべぼくの、ってやつ、でした。水がH2O。二酸化炭素がCO2 になるのは、このすいへいりーべで始まる、物語が全て入っているのだから、びっくり。こちらのほうも探偵小説そっくり!こちらは野球かサッカーの背番号が謎解きプロットになる。水素が背番号一番です。酸素は八番。そんな単純な背番号で、物質が全部できているなんてことを想像しただけでミステリーそのものだ。目の前の机もパソコンも、テレビも空も、太陽も、地球も、全部、その背番号の選手がつくっている。それも種類はさほど多くない。これだけ世の中に複雑に物が溢れているのに、番号で言うと一番から十八番までで、もう世界の99.9%が表現されている。
 そうしてその背番号がたとえば109番とか108番のような物質に何が発見されたか?Eアインシュタインの予言のとおり、重さがエネルギーに変わる、放射性物質が発見されたわけだ。すでに自然界で起こっていた、核分裂が起こることがわかり始めて、これが広島と長崎の爆弾になっていったーー。八月六日。八月九日。これは人類にとって凄まじい一日なのだ。不可逆性の道に向かった戻れない事実。そうだ。ミステリーと同じなんだ、殺人事件も、探偵が発見するヒントも一度、文章にして開示して仕舞えば戻れない。
 僕は、受験勉強は興奮した探偵小説の殺人犯探しのような物だと思っている。学んで前に進むことは本を読み進めるのと同じだ。

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