百八十 電話 (御園生探偵)
軽井澤さんからの電話が鳴った。
「いま社用車(キャロル)は拾いました。」
「よかったです、ありが…。」
僕がそう返そうとするのを遮るように
「み、御園生くん、前言っていた、女性というのはどんな人でしたか?」
「女性?」
「唐突にすいません。あの例の事務所の前に居たという?」
「ああ。そうですね、すこし年上だと思いますが。どうしてですか?」
軽井澤さんは少しためらってから
「実はいま、まだそんな人間がいた気がしたのです。この車に、何かつけられたりしてませんよね。」
「車にですか?さて」
「事務所に誰かがつけてるというのは、わかるのですが、青山墓地の北側で今車を拾おうとしたその場所にいた気がしたのです。はい。二重橋の時に感じた女性です。」
「事務所でなく車を、尾行しているということですか?」
「ええ。大手町二重橋も、ほら、キャロルで向かったので。」
「車に何かされているーー?そう言えば、会ったとき、車の下に落とし物をしたとか、言ってました。」
「なるほど。それはすこし怪しいですね。わかりました。ありがとうございます。ちょっと事務所に戻りながら様子を見てみます。」
「了解致しました。」
僕はふと、チャットの流れがあったので思うことがあったけどもそのことは言葉にはせず、
「軽井澤さん、僕の方でも江戸島を追ってみようと思います。江戸島本人は面会をしたがらない様子ですが、明日朝、タクシー会社に聞いてもいいと思いました。」
と自分の考えを伝えた。言ってからこの案件から離れろと言っている軽井澤さんへ少し当て付けた感じになった気もした。
少なくとも江戸島と一緒に青山から工業地帯を回ったタクシーのナンバーや会社名はメモしてある。それだけは問い合わせてみようと思っていた。おそらく江戸島を乗せた運転手はそれなりに何かを見たはずだと思っている。