百七六 青山墓地(軽井澤新太)
御園生くんの乗り落としたままのキャロルは、消防署通りの夜の闇の中にありました。墓地の北端はそのまま神宮外苑に通じる細い通りがあり、その通りが消防署の前を通るので消防署通りと言います。手前の道はすべて墓地と続きになっているので桜の時期はたくさんの花見客が陣取る場所ですが、葉桜の後のこの夜は誰一人いない暗闇でした。
そのとき、です。
ふと、二重橋で受けたのと同じ感覚がわたくしの背中を襲いました。
なにかの尾行がある気がしたのです。
漠然と、わたくしはそれを<女>だと感じました。