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星空出版 HOSHIZORA PRESS

ミステリー・連載

パラダイム

下代沢侯二
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第 153 章 百五十 祖師谷宅 (赤髪女)

百五十 祖師谷宅 (赤髪女)

 赤髪女は昨夜、新木場の埋立地から逃げるように自宅に戻った。電車に乗るときも、しつこく追尾が気になり、何度も後ろを振り返った。
 GPSはずっと見るようにしている。風間のオレンジの輝点が何故か消えた。新宿から始まっている青点と、探偵事務所の車の緑点の動きを暇さえあれば見る癖がついている。
 ただ、このGPSへの指示者の興味は薄まっている。既に指示者は次の標的に向かっているのだ。あの埋立地に現金をとりにくる男だーー。
 本来はそのオザキと名乗る男に、GPSを設定しなければならない。
 海風の中、遠くからこちらを見ていた人間がその男かはわからないが、赤髪女には恐怖があった。何故か純粋に怖いと思った。携帯電話で話して声を聞いた時から、オザキと名乗る男には少し別物の恐怖があった。
 正直その男に近づいてGPSを取り付けることなどできる予感がしない。
 赤髪女は、昨日のGPSの記憶を辿った。
 昼の時点で探偵の車は、二重橋にいた。夕方まで動かなかったが、その後、銀座に移動した。
 あの探偵が銀座で食事をする想像がつかない。とするとX重工の会長を尾行したのかもしれない。二重橋に来たのも含め、一応そういう流れがある。
 指示者への追加の説明はそうしてみよう、と思う。
 探偵の車を示す緑点は、そのあと、銀座から海の方に向かっていた気がするが、最終的には、代々木上原のあたりにしばらくいた。そして、深夜に事務所まで戻った。
 このことを自分なりの解説をしながら報告しようか。
 その報告に加えて、またお金を新木場に置きに行く。
 今日のところはそれでいいと思う。
 新しい指示者の仕事は金がいいけども、ふと気がつくと自分が毎日忙しくなっている。薬のせいでさほど気がつかずに過ぎているが、以前の、金を拾うだけのような単純な仕事の時はこうではなかったと思う。以前の方が自分の生活にも心の安定にも良かったかもしれない。生活にちょうどいいくらいの、のんびりとしたお金が落ちているくらいの方が。

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