百五十 祖師谷宅 (赤髪女)
赤髪女は昨夜、新木場の埋立地から逃げるように自宅に戻った。電車に乗るときも、しつこく追尾が気になり、何度も後ろを振り返った。
GPSはずっと見るようにしている。風間のオレンジの輝点が何故か消えた。新宿から始まっている青点と、探偵事務所の車の緑点の動きを暇さえあれば見る癖がついている。
ただ、このGPSへの指示者の興味は薄まっている。既に指示者は次の標的に向かっているのだ。あの埋立地に現金をとりにくる男だーー。
本来はそのオザキと名乗る男に、GPSを設定しなければならない。
海風の中、遠くからこちらを見ていた人間がその男かはわからないが、赤髪女には恐怖があった。何故か純粋に怖いと思った。携帯電話で話して声を聞いた時から、オザキと名乗る男には少し別物の恐怖があった。
正直その男に近づいてGPSを取り付けることなどできる予感がしない。
赤髪女は、昨日のGPSの記憶を辿った。
昼の時点で探偵の車は、二重橋にいた。夕方まで動かなかったが、その後、銀座に移動した。
あの探偵が銀座で食事をする想像がつかない。とするとX重工の会長を尾行したのかもしれない。二重橋に来たのも含め、一応そういう流れがある。
指示者への追加の説明はそうしてみよう、と思う。
探偵の車を示す緑点は、そのあと、銀座から海の方に向かっていた気がするが、最終的には、代々木上原のあたりにしばらくいた。そして、深夜に事務所まで戻った。
このことを自分なりの解説をしながら報告しようか。
その報告に加えて、またお金を新木場に置きに行く。
今日のところはそれでいいと思う。
新しい指示者の仕事は金がいいけども、ふと気がつくと自分が毎日忙しくなっている。薬のせいでさほど気がつかずに過ぎているが、以前の、金を拾うだけのような単純な仕事の時はこうではなかったと思う。以前の方が自分の生活にも心の安定にも良かったかもしれない。生活にちょうどいいくらいの、のんびりとしたお金が落ちているくらいの方が。