百四二 元警部補(石原里見巡査)
小板橋らが大部屋を出たのを見て鞄から石原はノートを取り出した。
言葉を書き連ねていく。
・金石警部補の失踪は、警察上層部の何らかの意向に絡むと、銭谷警部補は思っている。
・六本木事件は、ある時期からなぜか「潮目」が変わった
・金石警部補と思われる人物が銭谷警部補に連絡を続けている。
金石警部補らしき人物のメールの速写ーー。
ToZ
文学的に言えば、
百の事件には
百を被害者がある
一つとして同じ事件はない
また、
加害者にはまだ未来があるが
殺人被害者には、永遠に未来はない。
言ったはずだ。
K
よくわからないメールである。ある意味ただ、飲んだ勢いで送ったりしているようにも思えるし、銭谷警部補との会話が好きで繰り返しての酒飲み話の会話にも見える。いや本当にそう見える。
ToZ
本末の転倒。
飲みすぎは、やめておけ。
若者に迷惑をかけないようにしろ。
K
ToZ
孤独。
被害者の孤独。
そのとなりに自分がいるのか?
ましてや、被害者と加害者の、その対立構造などを作っている奴らに加担してはならない。
K
石原はノートの速写をしばらくのあいだ見ていた。金石警部補は、いや元警部補がなぜこんなメールを送るのかが腑に落ちない。内容も刑事の議をいくつか語っているけれども、そういうものを誰かに見せたいのか、ただ銭谷警部補と語り合いたいのか。
石原は大部屋で一人頭を抱えていた。