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星空出版 HOSHIZORA PRESS

ミステリー・連載

パラダイム

下代沢侯二
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第 14 章 十一 十四枚  (軽井澤新太)

十一 十四枚  (軽井澤新太)

 風間からの電話を受けわたくしは事務所に急ぎました。既に朝の早い御園生くんは出所しておりました。
「御園生さん、風間からの郵便物はありましたか?」
「郵便、これですよね?」
「ありがとうございます。」
「今朝は早く出所してたので、郵便もチェックしました。そうしたら、昨日の話に上がっていた、葉書がこうたくさん届きまして。」
「たくさん、ですね……。」
「それにしても変な葉書ですね、これは。」
「変?」
「ええ。十四枚もあるのです。しかも、全部手書きです。」
「十四枚。全部手書き、ですか。」
 そういって御園生くんはわたくしにその葉書を並べて見せながら
「おんなじ筆跡で、全部、書いていますね。十四枚。」
 といいました。
 御園生くんはマグネットで一枚ずつ、事務所の白壁ーーホワイトボードがわりに使っている壁の方に貼り付けて行きました。
「ちょっと謎掛けみたいなのですが」
 御園生君とわたくしは、事務所のお決まりの席に座って壁面をじっと見つめていました。
 E N R
 T K U
 A A C
 S W C
 E O
 宛先を一つ一つ、手書きで書かれた葉書は14枚、裏面がアルファベットの文字のみで送付されておりました。昨日、風間から預かった一枚はEでしたが、
 他の十三枚にもそれぞれ文字が書かれていました。つまり、十四枚の葉書の表が全て同じ風間宛で、裏に、一枚ずつ、
 E N R
 T K U
 A A C
 S W C
 E O
 の文字が、書かれていたのです。
「しかし、普通にこんなの送られてきたら怖いですね。」
 御園生くんは当然首を傾げました。
「そうですね。朝起きたら、自分の名前宛ての葉書があって、それが、十四枚。怖いですね。全て手書きで差出人不明。それが風間曰く、命に関わるとわかっている内容だとすると、恐ろしいどころではないね。加えて、猫の死体がまた置かれたというのですから。」
「猫が、またですか。」
「今朝、風間から電話がありました。で、葉書を送ったと。」
「なるほど。そうなのですね。でも軽井澤さん、これは郵送でなくて、風間本人が、我々のポストに投函したんだと思いますよ。」
「え、本当ですか。」
「ええ。おそらく。ただ、僕が着いた時には風間らしき人間はいませんでしたが、ほら葉書を我々に送るなら宛先を書き直さねばならないですから。」
 その通りだとわたくしは、相槌をして、
「しかし、わざわざこんな朝早くに西馬込から、西麻布まできたのですね。」
 なんだか、不自然な風間の焦りを体に浴びながら、わたくしはまざまざと、壁に貼られた十四枚の葉書を見つめました。見れば見るほど、言葉を失う、ようなよくわからないハガキでした。
 大田区西馬込XXXXXXXXXX 風間正男どの
 E N R
 T K U
 A A C
 S W C
 E O
「しかしこれ全部手書きっていうのは、送った人間は筆跡を取られる恐怖もないということですかね。もう、半分狂っているとも言えるんですかね。」
「そうかもしれないですね。」

文字
明暗
組方向