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星空出版 HOSHIZORA PRESS

ミステリー・連載

パラダイム

下代沢侯二
第136章をXでシェア
第 136 章 百三三 幸運 (赤髪女)

百三三 幸運 (赤髪女)

 X重工の赤煉瓦ビルを出てから、二人は、皇居周りで何やら、地面にうずくまって話していた。夢中に中年の探偵のほうが若いあの美男子に何かを語っていた。ところがその後明らかに彼らは歩みを変えて、丸の内のオフィス街に消えて行った。その足取りには明らかに意思があった。
 (尾行に気がつかれたのだろうか?)
 下手な深追いは、今後に影響もするのもあり赤髪女はそこで今日の仕事を手仕舞いした。
 そのとき、見計らったように電話が鳴った。
 指示者のヘリウムガスの声だった。
「最新の進捗を訊こうか。」
「ちょうど動きがあったとこです。」
 指示者の電話の回数が増えている。その都度、新しい情報を求めているのである。
「探偵側に動きがありました。探偵が二人、大手町の二重橋に来ています」
「二重橋。この車の停まっている、GPSの場所だな。」
「はい。」
「二人というのは?」
「あの事務所は軽井澤という所長と、若者の二人のようです。小さな事務所です。電話番号はホームページに携帯電話を載せておりましたので確認できました。」
「うむ。奴らは一体何を目的で、そんな場所にいくのだ?風間からの依頼とは関係ないだろう。」
「二重橋の赤煉瓦のビル、がアポイント先でした。ご存知ですか?」
「質問はしないルールだ。」
「はい。会社の名前は、X重工です。おそらくですが、そこの会長に会いに行った様子です。」
「…なぜわかる。」
「聞かれるとおもって、上手く聞き出しました。」
「どうやって?」
「受付で遅刻したことにして、軽井澤事務所の人間のフリ、をしました。」
「ふむ。」
「多分、軽井澤という名前が印象的だったのかも知れませんが。受付の女性が彼らの面会先を教えてくれました。」
「誰と面会したのだ。」
「江戸島という会長です。」
「江戸島会長?」
 赤髪女は、あれと、と思った。指示者が明確に聞き返したからである。自分は江戸島という言葉を初めて聞いたときに、すぐに認知できなかった。江ノ島とか江戸とか間違えるくらい普段耳慣れない名前なのである。
「…はい。お名前をご存知ですか?」
「質問はしない約束だ。」
「……。」
「で、どうだったのだ?」
「三十分ほどして、二人は赤煉瓦のビルから出てきました。何か得るものでもあったのか、ビルの外に出ても二人で熱心に打ち合わせをしておりました。ただ、おっしゃる通り風間との関係については確認はできていません、あくまで探偵の周辺の尾行情報です。」
 赤髪女はそこまで話した。情報としては十分だろう。料金の追加の話は、次回の電話でしようと思った。
「以上です。引き続き、今日のもうひとつの重要な仕事の方に移動します。」
「……。」
「以上になります。」
「そこからなら、有楽町線がいい。」
「はい?」
「大手町から有楽町まで歩けば、新木場への直通の地下鉄が出ている。」
 赤髪女は、指示者の丁寧な言葉に少し躊躇した。
「ありがとうございます。お詳しいのですね。」
「地下鉄の路線など誰でも知っている。遠回りをして欲しくないだけだ。日没までに、が例の現金を届ける仕事の約束のはずだ。」

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