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星空出版 HOSHIZORA PRESS

ミステリー・連載

パラダイム

下代沢侯二
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第 133 章 百三十  自問 (軽井澤新太)

百三十  自問 (軽井澤新太)

 御園生君と話しているとわたくしは、さまざまな事を思い詰めてしまう性質がございます。これはわたくしの問題であり、彼の問題では一切ないのです。そういう、自分自身の自意識の過剰は、わたくしの課題です。思えばそう言う、さまざまの出来事に気持ちよく打算的になれない性質がわたくしの欠点でもあり、適応能力のなさとも言えます。わたくしは、そういう性質なのです。ひとつのことを強く確信してしまうと、それに囚われて他の思考の自由を失います。物事を全部、過去から未来へのひとつの直線に並べて悩むのです。そうしてその直線が整理できない部分を繰り返し思い悩むのです。
 この数日間、わたくしはトラウマのように、過去の自分に対峙しておりました。風間からの打診、意味不明の葉書、手書きの文字列、凄惨な守谷の私刑、風間の音信不通、公衆電話の告白、つぎつぎと続いた一連は、ひとつの直線の列に並びながら、わたくし自身の過去のとある方向へ収斂するのです。脳裏に直線的に並んでいく。並ばなくていいのに勝手に並んでいく。そうして、わたくしは誰にも説明しようのない、共感されるべきでもない、懊悩へ落ちていくのです。
 例えば心を病んだ自殺者がどこまで正確にその理由を説明しても賛同する人は稀でしょう。不気味で後ろ向きな精神の暗鬱作業を、誰が楽しんで紐解くでしょうか。死ぬことで世の中を前進させるという驚愕たる覚悟ならまだしも、ただ自分の檻の中で壊れていくものを人間は見たくはないのです。敢えて言えば、わたくしの心は、そういう檻の中の病理であり、誰しもと共感のない藪の中に向かう種類のものなのです。
 脳裏を世界地図に例えるなら、冷たい北極の海のように人心を消し去った方角です。冷たく遠く理解の及ばない方角です。氷の絶海に心が彷徨います。娘の紗千が悪に犯される白昼夢が重なるのも、そのひとつです。悪夢は墨が滲むように広がります。それでいて少しずつ、その冷たい海の方角に収斂していく。わたくしはそれらを意識し続けながら、できれば思い出したくない、悪霊でも振り払うように、蓋を被せ、避けることを続けるのです。

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