百十九 早朝の連絡 (御園生探偵)
それは朝の四時だった。
重要なメールを音が出るようにしている僕のパソコンに、微かなチャイム音が鳴った。僕はベッドから降りてMacBook Airの置いてある机に向かった。
パソコンにレイナさんからのメールが新着している。今日の打ち合わせで頼んだことが早速まとまり、メールをくれたようだった。宛先は僕だけだった。軽井澤さんは入っていなかった。
題名に「共通点のまとめ」とある。
風間と守谷、二人の検索履歴に、重複パターンがあると僕は仮説した。例えば出身が奄美大島で同じなら、奄美、大島と、言う言葉が共通する。三年も遡れば確実に同じ文字を確実に使うのではないか?出身が北海道と九州では、雪や海の使い方も、当然その周辺の言葉の重なりも違うのではないか?その種の現象があの二人にはあると考えたのだ。その意見を、レイナさんは面白いと言ってくれた。むしろ、すこしアイデアを称賛してくれた気さえした。
だが予想に反し、レイナさんの報告のメールは思ったよりそっけないものだった。タイトルにはご依頼の共通点の件とだけあり、そして本文にもただ、よろしくお願いしますとあるだけだった。同封されたのはファイルが一つだけ、それも簡単なテキストファイルだけだった。
僕は、ファイルを開き、眺めた。
風間と守谷の共通の検索語句だけが遡れる範囲で並んでいた。
Wi-Fi
天気
引っ越し
探偵
探偵事務所
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競馬
地下鉄
アプリ
LINE
銀行
ガス
振込
振り込み
滞納
地図
地図アプリ
コーヒー
喫茶店
保護司
新宿
東大久保
東京
渋谷
スイカ
Suica
風俗
マッサージ
歌舞伎町
居酒屋
風俗比較
無料
プリペイド携帯
調査
現金
江戸島
ドトール
タバコ
喫煙所
コンビニ
パスワード
家賃
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時刻表
鍵
道のり
ニュース
探偵
今日の天気
軽井澤
御園生
想像し期待したものとはだいぶ違う、比較的特徴の少ない単語の列だった。特定の学校や、最寄駅、個人名などが重なるのを僕は想定していた。分倍河原とか、新百合ヶ丘のような土地の名前とか、桜ヶ丘小学校、多摩川中学のような学校名とかだ。少なくとも子供の頃から風間と守谷が何かの時間を共にしたと思える特殊な言葉がいくつか重なると思っていたのである。
そこには、地元の地名もなければ、学校名もなかった。ただただ一般的な語句の重なりだけだった。風間や守谷の過去に関わる言葉、犯罪の内容や、個人名が出たりすることはなく、ほとんど一般名詞ばかりが並んだ。固有名詞として、探偵とか軽井澤、御園生の名前があるのは自分が予想した通り、Googleの検索を行なって軽井澤事務所のホームページにたどり着いて連絡をしてきたのだと思った。
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僕は、繰り返し単語を見つめ直した。これだけしかないのかと、レイナさんに恨めしく質問をしたい気持ちを抑えながら。しかし、幾度見ても期待していたようなものはなかった。見たことのある言葉ばかりだと思った。
窓の外が薄らと夜明けを始めていた。