実験番号 JHC16
中学校の頃最もその人と近づくことがあった。あれは理科室で別のクラスとの授業で僕が勘違いした時だ。僕はトイレに行ってから少し遅れたと思って理科室に走った。理科室は第一と第二があって、僕は第一に飛び込んだ。室内は閑散として誰もいなかった。そこにその人がいたのである。広い教室に人間が二人だけになった。彼女は多分僕と同じように第一と第二を間違えたんだ。
「あ。」
彼女は、なにかを小さく呟いた。僕は彼女が扉を開けた時にすぐにその人だと気がついた。逆にその人は僕のことを一体誰か知らない。こちらを見つめることができず、あわてて理科の教科書を開いて机を見つめていた。僕は数秒して静かにその部屋を出た。会話するきっかけがあってもよかったのだが、できなかった。そんな勇気を持っていなかった。ただ僕はそれでも興奮していた。ほんの数秒だけだが、僕はその人とたった二人で空間を共にしたのだ。